大谷翔平の放出に待ったをかけ、エンゼルスの価値をさらに上げたいオーナーの商魂と手腕
大谷残留の確信を得た
「モレノ・オーナーは大谷がFA取得後もエンゼルスに残る確信を得たというのです。大谷の新たな契約はメジャー史上最高規模になる。移籍の可能性があるのは資金が豊富で、コンスタントに優勝を狙える強豪球団でしょうが、そういったチームが大谷をエンゼルスのように本人の好きに起用できるとは限りませんからね。大谷はエンゼルスで勝てるのがベストと考えていると理解したのでしょう。つまり大谷が残留するから、球団の価値はまだまだ上がると判断したのです」
モレノ・オーナーは故郷アリゾナ州の看板広告企業を急成長させて莫大な富を築いた。
同氏が球団経営者として真っ先に手を付けたのは、入場料と球場内のビールの値下げだった。試合中は一般の客席に座ってスタンドの声に耳を傾けるなど、常にファン目線に立った営業を行ったこともあり、西海岸ではドジャースに次ぐ人気球団に押し上げた。
■チーム運営に関してはズブの素人
球団ビジネスに関しては経営者としての手腕を発揮したものの、チーム運営に関してはズブの素人に等しい。02年に球団史上唯一のワールドシリーズ制覇を成し遂げたマイク・ソーシア監督を寵愛し、19年間にわたって指揮官として起用。結果が出ないとGMに責任を負わせて相次いでクビにしてきた。「カネは出すが、口も出す」という典型的な独善家で、ドラフトやオフの補強に影響力を及ぼしている。
大リーグに詳しいスポーツライターの友成那智氏がこういった。
「モレノ・オーナーは、これまでハミルトン、プホルス、レンドンといった強打者を中心に大型補強を繰り返してきた。打ち勝つ野球を掲げているからですが、いずれも全盛期を過ぎた選手ばかりで、巨額のカネをつぎ込みながら不良債権と化した。補強はネームバリューを優先して行い、打者には惜しげもなく資金を投じるのに、投手には安い金額しか提示しないため、エース級には見向きもされません。過去にも実績のある投手にオファーしながら、条件が悪いため、獲得に失敗したケースは少なくない」
モレノ氏の稚拙なチーム運営はアマチュア選手のスカウティングや若手育成の弊害になっているという。
「エ軍はオーナーの方針から球団職員の待遇が悪いことで知られます。コロナ禍の20年にスカウト活動が停止された際には、地域スカウトを一斉に解雇した。編成部門の戦力低下は著しく、ここ数年はドラフトで苦戦しています。毎年、有望株ランキングでは下位に位置付けられるほど。仮に大谷と再契約できたとしても、来季以降、常に優勝を狙えるチームづくりができるのか甚だ疑問です」(前出の友成氏)
チームは貯金7。3チームがプレーオフに進めるワイルドカード争いで、3位ヤンキースに1ゲーム差と迫った。が、仮に大谷がエンゼルスに残留したとしても、常に優勝を狙えるとは限らないようなのだ。