185センチ大型ボランチの浦和の伊藤敦樹は「存在価値」を発揮して代表生き残りを図る
伊藤敦樹(浦和/MF/25歳)
「日本代表から帰って、自分の存在を(浦和)レッズで示していくことが、僕の使命でもあると思う。本当にレッズを勝たせられるような選手になっていきたいです」
こう語気を強めるのは国内組の成長株・伊藤敦樹だ。
日本代表の6月シリーズに追加で代表初選出を果たし、9月の欧州遠征シリーズのトルコ戦(ゲンク)で待望の代表初ゴールをゲット。
2002年日韓W杯で一世風靡した稲本潤一(南葛SC)を彷彿させる大型ボランチへの期待は、日に日に高まっている。
1998年8月生まれの伊藤敦樹の出身地は、埼玉県浦和(現さいたま)市。まさに浦和レッズのお膝元だ。中学・高校の6年間、浦和のアカデミーで育ち、ユース時代は大槻毅監督(現群馬)の下、ひとつ下の橋岡大樹(シントトロイデン)や荻原拓也(浦和)らと切磋琢磨した。
しかし、今では信じられないことだが、当時は体の線が細く、フィジカル的に見劣りしたこともあって、トップ昇格は見送られた。
本人は流通経済大学へ進み、一から肉体改造を行い、プロのレベルで戦えるように自己研鑽を続け、2021年に古巣・浦和入りを勝ち取った。
そこからの飛躍は凄まじかった。昨季チームを率いていたたリカルド・ロドリゲス監督に高く評価され、大卒1年目ながらボランチの軸に据えられ、存在感を増していく。2022年には「近い将来、代表入りもあり得る」と評されるほどに。
5月にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇の立役者になったことで、周囲からの期待はより一層高まった。それが実現したのが6月。エルサルバドル戦(豊田)前日に体調不良で離脱した川村拓夢(広島)に代わって追加招集され、一度も全体練習に参加しない状態でいきなり終盤から出場。代表デビューを飾ったのだ。
「昨日の試合より今日の初練習の方が緊張感がありました」と本人も試合翌日の練習後に苦笑したが、浦和の先輩・遠藤航(リバプール)や流経大の先輩・守田英正(スポルティング・リスボン)の一挙手一投足を目の当たりにして「ひとつひとつの技術や強度の差があるな」と痛感。世界基準を常に意識しながらレベルアップしなければいけないという危機感を強めたようだ。
それでも「自分みたいに身長があって、体格に恵まれたボランチの選手というのは国内にはなかなかいないし、自分の存在価値はそこにあると思う」とも発言。大型ボランチの優位性を前面に押し出し、代表生き残りを図っていく覚悟をのぞかせた。