「地球を持ち上げるようにせり上がるんだ」琴ノ若に祖父・琴桜の教えは受け継がれるか
琴ノ若の大関昇進で、祖父・元横綱琴桜(先代佐渡ケ嶽親方=円内)の存在がクローズアップされている。17年前に66歳で病没したが、健在ならさぞ喜んだことだろう。
現役時代は強烈なぶちかましとのど輪で「猛牛」と呼ばれる半面、もろさとけがが同居。大関在位5年を過ぎてから2場所連続優勝し、32歳で横綱になって「うば桜の狂い咲き」と書かれた。今ならデスクが書き直すはずだ。
在位8場所で1974年に引退したが、その後の熱心なスカウトと厳しい指導は師匠としても横綱級だった。北陸地方の小さな町で、民家の前に「日本相撲協会新弟子連絡所」の看板が出ているのを見たことがある。相撲協会にそんな出先機関はない。近所で聞くと佐渡ケ嶽部屋後援者の家だった。情報網と行動力、あの手この手で弟子を集めるパワーには、昨今の親方たちが見習うべきものがある。
「×××になるまでやるんだよ」と、稽古場で飛ばしたゲキも関係者の間でよく知られている。「×××」は差別用語の類いで、弟子の一人は「◯◯◯、△△△……ひと通り全部言っていた」という。時代の違いもあるから厳しさの表れとしよう。大関琴風(現尾車親方)ら多くの関取を育て、定年退職後まもなく琴欧洲(現鳴戸親方)、琴光喜も大関になった。