オリンピックを題材とした「独走」を上梓 堂場瞬一氏に聞く
「他の先進国と比較しても、日本はスポーツ強化策に投入される予算は少ない。しかし、大金が動くことでスポーツのビジネス化が進み過ぎると、選手本位ではない事態にも陥る恐れがあります。そのバランスは非常に難しいと、私は常々思ってきました。世界一になって金メダルを取ることは素晴らしい。しかし、スポーツの目的がそれひとつになることに、違和感を覚えずにはいられません」
<日本のスポーツ行政の暴走に警告>
10歳の頃からSAとして生きてきた沢居は、その生活に何ら疑問を持つことなく、勝つためだけに柔道をしてきた。SAであったことは、沢居の誇りだ。一方、高校生になってからSAに指定された仲島は、籠の鳥のような制度に疑問を持ち始める。
「スポーツがテーマとなっていますが、一般社会でも同じようなことがあると思います。大きな組織にいれば守られ、安定が約束される。しかし、自分の意思に従って行動することは制限されるものです。それが当たり前となっている人には楽な世界かもしれませんが、たとえ不安定でも自由に、自分の意思で自分の人生を歩みたい人もいます。どちらの生き方が正しいかは分かりませんが、少なくとも金だけで人を縛ることは難しいでしょうね」