「ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと」池内紀、小林エリカ、子安美知子ほか著
■ファンタジー作家エンデの世界を案内
20世紀を代表するドイツ人ファンタジー作家、ミヒャエル・エンデ(1929~95年)のビジュアル入門書。人間から時間を盗む「灰色の男たち」に奪われた街の人々の時間を取り戻そうとする、不思議な力を持つ少女の活躍を描いた「モモ」(73年)や、いじめられっ子のバスチアンが本の世界に入り込み、滅亡間近の国「ファンタージエン」を救う「はてしない物語」(79年)など、誰もが知るその作品は年齢を超えて読む人の心に深く訴える普遍的な魅力を備えている。それは、エンデが作家であるとともに社会に対する鋭い洞察と深い思索を備えた思想家でもあったからだ。
まずはそんなエンデの65年の人生をアルバムで振り返る。
1929年、雨宿りが縁で知り合った画家の父親エドガーと孤児院で育った母親ルイーゼの間に生まれたエンデは、多感な少年時代を戦争とともに過ごし、やがて俳優を志し演劇学校を卒業するが挫折。次に目指した作家の道も諦めかけていたときに、旧友から絵本のテキストを頼まれ書き始めた物語が500ページの大作となり、作家デビューを果たす。さらにその作品「ジム・ボタンの機関車大旅行」が人形劇となりテレビで放映され、有名作家になっていく。