「女系の総督」藤田宜永氏

公開日: 更新日:

■「意見を述べたらしばらく黙る。これが女性に囲まれて生きる男の処世術です」

 我輩は男である――。こんな一行から幕を開ける本書は、女系家族の父親を主人公にした著者初の家族小説である。

「この小説のヒントになったのはカミさん(小池真理子氏)なんです。カミさんは2人姉妹の長女なんですが、小池家に行くと母親と娘2人のおしゃべりがすごくて、そのうち『パパ、もう寝たら?』と追い出されるシーンを何度も見てきたんですね(笑い)。またカミさんと妹がケンカすると互いに僕に愚痴を言い、でも数日もすると仲良く電話してる。家族の女性同士の結びつきは摩訶不思議で、男はついていけません。そんな熱帯雨林のような女系一家の中で“総督”として生きる主人公・崇徳のありようを描きました」

 十数年前に妻を亡くした還暦目前の森川崇徳は、母、次女、三女夫婦と孫娘のほか、親戚、2匹の猫までもが女という構成。賑やかといえば聞こえはいいが、娘たちには言われ放題、聞きたくない赤裸々な会話など崇徳は女性群に圧倒されっぱなしだ。しかし崇徳はうまくやっている。心得があるのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…