「1969 新宿西口地下広場」大木晴子、鈴木一誌編著
まだ最初の高層ビルさえ姿を見せていない1969年2月28日の夕刻、新宿駅西口の地下広場で数人の若者がギターを奏でながら歌いだした。ベトナム戦争反対を訴える若者たちは、以降、毎週土曜日の夕方に広場に現れた。最初は足を止める人も少なかったが、その数は次第に膨れ上がり、多いときには6000人の若者たちが広場を埋め尽くし、共に歌い、活発な議論を戦わせた。しかし、7月に広場は当局によって新宿西口地下通路へと名称が変更され、道路交通法のもとで立ち止まることが許されなくなり、「フォークゲリラ」と呼ばれた運動は終わりを告げる。
当時は多くの大学が紛争中で、前年秋の国際反戦デーでは「新宿騒乱」が発生、1月には東大の安田講堂が機動隊の手によって陥落するなど、若者たちが社会の矛盾と向き合い、熱く行動を起こしていた。
本書は、そうした時代にあって、非暴力闘争のシンボル的存在だったこの「フォークゲリラ」を通し、時代の転換点となった1969年を読み解いたビジュアルブック。
中心メンバーのひとりだった大木晴子(旧姓・山本)さんによると、フォークゲリラは、サラリーマンなど関心のない人にもフォークソングで訴え、戦争や社会の矛盾について一緒に考えてほしいという思いから始まったという。その思いが通じたのか、集会の周りでは、幾つものグループが自然とできあがり、熱く議論を戦わせていた。