「朝日新聞 日本型組織の崩壊」 朝日新聞記者有志著
部数こそ読売の後塵を拝するものの“ニッポンの大新聞”といえばやはり朝日だ。その朝日が前代未聞級のスキャンダルを連発。まさに日本のジャーナリズムの危機にほかならない。
だが、現役の「記者有志」による本書によれば25年前に同社のカメラマンが故意にサンゴに傷をつけた「朝日サンゴ事件」のときから体質は一向に変わらないという。「官僚的に突っぱねたり、たらい回しにしたり、時には声高にねじ伏せたり、非を部分的にしか認めないで姑息な話のつけ方をしたり」は同事件の際の「反省」だったが、今回のスキャンダルにそのまま当てはまる。
筆記試験だけでも競争率30倍という難関をくぐりぬけた学歴エリートたち。そのプライドとエリート臭が邪魔して泥くさい取材になじめず、東京本社に転勤できるよう上司や先輩の顔色ばかりうかがう癖が強くなる。こうして人事評価に障りが出るのを恐れて誤報の訂正もしたがらないという体質が築かれていくのだ。「吉田調書」「慰安婦問題」の検討のほか、社内の権力闘争の生ぐさい話も満載。
(文藝春秋 780円+税)