「エウレカの確率」石川智健著
経済学を使って犯罪を分析するというユニークな経済学捜査員・伏見真守の〈エウレカ・シリーズ〉の第2弾。
大手製薬会社の向山製薬の研究所内で「研究所で人体実験が行われている」と告発する怪文書が発見された。犯人捜しを命じられたコンプライアンス課課長の玉木は容疑者を3人にまで絞る。そこで行き詰まっていたところ3人のうちの1人がアレルギー発作でショック死する。いったんは事件性なしと判断されたが、他殺の疑いがありとする特別捜査官の伏見が向山製薬内の捜査に着手する。玉木はお目付け役として伏見と行動を共にするが、およそ捜査官らしからぬ風貌と言動に面食らってしまう。しかも、アンカリング、フレーミング、ナッシュ均衡といった行動経済学の理論を犯罪に当てはめて犯人を捜すというのだ。伏見は玉木の戸惑いをよそに、独自に収集した情報を組み合わせていくことで事件の真相に迫っていく……。
経済学の中でも心理学に近接する行動経済学を駆使するのがこのニューウエーブ・ミステリーの真骨頂。今後が楽しみ。
(講談社 1500円+税)