ある精神科病院に入院中の患者・第23号が誰彼かまわずしゃべるところによると、彼は3年前の夏、穂高山へ登る途中、深い霧に立ち往生。仕方なく梓川の河原で食事をしようと準備をしていたが、振り返ると、その作業をのぞき込んでいた河童がいたという。河童を夢中で追いかけた彼は、穴に落ち、気が付くと大勢の河童に囲まれていた。チャックという河童の医師に診察を受け、世話になった彼は、この国の法律で定める「特別保護住民」として彼らと生活を共にすることになった。(芥川龍之介著「河童」)
同時代を生きた「おばけずき」3人、泉鏡花・芥川龍之介・柳田國男の河童にまつわる作品を集めた異色作品集。(筑摩書房 1200円+税)