「荒木飛呂彦の漫画術」荒木飛呂彦著
「荒木先生、こんなことまで書いてしまっていいんですか」と聞きたくなるほど、懇切丁寧かつ実践的な漫画の指南書である。
高校時代から漫画を投稿しはじめ、19歳のとき「週刊少年ジャンプ」に掲載された「武装ポーカー」で漫画家デビュー。代表作「ジョジョの奇妙な冒険」は長期連載を続けている。しかし、漫画家への道は平坦ではなかった。編集者は鬼だった。
原稿を持ち込んでも、1ページ目をチラッと見ただけで袋に戻してしまう編集者に、最初の1ページをめくらせるにはどうしたらいいか。この切実な体験から漫画術は説き起こされ、奥義へと進んでいく。
漫画の「基本4大構造」とは、「キャラクター」「ストーリー」「世界観」、そして「テーマ」。互いに深く影響を及ぼし合っているこの4つを統括し、つないでいるのが「絵」であり、セリフが絵を補う構造になっているという。なるほどそうだったのか……。漫画家の手の内を知ると、漫画の読み方が深まりそうだ。
著者はこの本を、「王道漫画」に行き着く「黄金の道」を示す地図と位置づけている。時代を超えて読み継がれる作品を描いてほしいという、後進への熱いエールが伝わってくる。(集英社 780円+税)