「誓約」薬丸岳著

公開日: 更新日:

 主人公は、レストランバーのオーナー落合幸弘に見込まれ、共同オーナーとして店のマスターを務める向井聡。現在、小学生の娘と優しい妻を持ち、仕事も家庭も順調な人生を歩んでいるが、かつて顔の半分に大きなあざを持っていることを理由にいじめに遭い、窃盗や傷害を繰り返して少年院や刑務所に入った過去があった。

 しかも暴力団の闇賭博で多額の借金を抱えて逃亡している最中、娘を暴行して殺した犯人を殺してくれるならお金を用立ててくれるという末期がんの女と出会い、できもしない約束をしてしまったのだ。その金をもらって整形手術を受け、新しい戸籍を手に入れて、順風満帆な生活を送っていた向井のもとに、ある日、殺す約束をした男が出所したという内容の手紙が届く。死んだはずの女からの手紙に脅され苦悩する向井。果たして、脅しているのは誰なのか……。

「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞してデビューし、その後も「ハードラック」「友罪」などで話題を呼んだ著者による最新作。過去に犯した罪と誓約のせいで追いつめられる主人公の必死の推理劇に手に汗を握る。(幻冬舎 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…