時代に翻弄される「沖縄の底力」
「沖縄は未来をどう生きるか」大田昌秀、佐藤優著
「琉球独立」をとなえ、米大統領選ではトランプ勝利のほうがいいとまで主張する最近の沖縄。その底力を探る――。
アメリカとの粘り強い交渉姿勢がいまなお記憶に新しい元革新県知事と、外務省の切れ者官僚ながらスパイ容疑で逮捕勾留された“外務省のラスプーチン”。この意外な組み合わせは? と思ったら、実は佐藤氏の母が沖縄・久米島の出身で、大田氏とは遠縁に当たるのだという。ただしそれは単なる奇縁。本書はこの2人が正面から基地問題、沖縄の歴史といま、そして琉球独立論までを語り合った対談集。
学者政治家として学識豊かな大田氏に対して、佐藤氏はユニークなアイデアを次々披露。沖縄問題の解決には「地元から優秀な中央官僚をどしどし増やすべき」と助言する。「基地か地域振興(経済援助)か」という耳慣れた議論は「赤線だって地域振興と言い抜けられる」と一刀両断の一方、琉球独立論には「私には父の国と母の国が一つであった方がいいという偏見があります。(略)しかし、沖縄独立論を聞くと血が騒ぐ」との矛盾も口にする。収録されたのは合計7年にわたる記録。速成企画では得られない深みのある内容だ。(岩波書店 1700円+税)