映画界、出版界も注目 なぜいまヒトラーなのか?

公開日: 更新日:

「野戦病院でヒトラーに何があったのか」ベルンハルト・ホルストマン著、瀬野文教訳

 画家を名乗りながらも売れない貧乏暮らし。親の遺産で食いつないでいた引きこもり同然の若者が、兵卒として参戦した第1次大戦のあと、いきなり右翼の集会で頭角を現す。それがヒトラーだ。

 彼の人生についての研究は山のようにあるが、野戦病院に収容されていた1カ月ほどの期間については詳細不明という。入院の理由は毒ガスによる視覚障害。注目されるのが、傷病兵ヒトラーの治療に当たったのが精神科医だったこと。催眠療法の権威でもあったことから、相当強引な治療も行ったらしい。ヒトラーの場合、強度の妄想症状があった形跡が濃く、治療の過程で激しい恥辱を味わわされることもあったらしい。カルテは戦後、亡命ユダヤ人作家グループの手に渡ったが、それを手にした作家も担当医師も既に物故。

 その間の事情を追ったノンフィクションが本書だが、異色なのは著者。ドイツ国防軍の将校ながら反ヒトラー運動に連座して投獄。戦後はミステリー作家になり、80歳を過ぎて本書の執筆に取りかかったという。(草思社 2500円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出