「近代天皇論」片山杜秀氏
今上天皇が「天皇の神格化」を退ける気持ちは、「お言葉」で「崩御」後の儀式の大変さや社会に与える影響に触れた部分からも読み取れるという。
「崩御によって『元号』が変わる。よく『昭和はこんな時代』などという言い方をしますよね。天皇一人の寿命で社会の価値観が決まるというのは大変なことです。つまり、崩御は天皇の重みを国民に意識させる儀式なのです。今上天皇は、崩御に宗教的なものや荘厳なものが入り込む余地を少しでも減らしたい、という強い気持ちを示されたのだと思います」
一方、日本会議など天皇を「神」としたい右派勢力に乗っかる形で、安倍政権が国民統合の形を天皇の名の下の「慈恵」に求める空気が出てきていることに片山氏は危機感を抱いている。
「戦後の国民統合の仕掛けは、豊かさの再配分でした。そこからこぼれる人たちは福祉で救ってきた。しかし今、経済成長が止まって、先進資本主義国がこぞって成長モデルを失っている。今後どうやって国民を束ねていくのか、という時に、もはや福祉を提供できないからと、『日本は神の国』などという安上がりな国民統合の仕掛けに頼ろうとする。実は、『人間天皇』を強調した今上天皇の『お言葉』は、こうした動きに水を差すものとも読めるのです」