「近代天皇論」片山杜秀氏

公開日: 更新日:

 今上天皇が「天皇の神格化」を退ける気持ちは、「お言葉」で「崩御」後の儀式の大変さや社会に与える影響に触れた部分からも読み取れるという。

「崩御によって『元号』が変わる。よく『昭和はこんな時代』などという言い方をしますよね。天皇一人の寿命で社会の価値観が決まるというのは大変なことです。つまり、崩御は天皇の重みを国民に意識させる儀式なのです。今上天皇は、崩御に宗教的なものや荘厳なものが入り込む余地を少しでも減らしたい、という強い気持ちを示されたのだと思います」

 一方、日本会議など天皇を「神」としたい右派勢力に乗っかる形で、安倍政権が国民統合の形を天皇の名の下の「慈恵」に求める空気が出てきていることに片山氏は危機感を抱いている。

「戦後の国民統合の仕掛けは、豊かさの再配分でした。そこからこぼれる人たちは福祉で救ってきた。しかし今、経済成長が止まって、先進資本主義国がこぞって成長モデルを失っている。今後どうやって国民を束ねていくのか、という時に、もはや福祉を提供できないからと、『日本は神の国』などという安上がりな国民統合の仕掛けに頼ろうとする。実は、『人間天皇』を強調した今上天皇の『お言葉』は、こうした動きに水を差すものとも読めるのです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動