近ごろよく耳にする「ポスト・トゥルース」ってなんだ?
「ネットメディア覇権戦争」藤代裕之著
「ポスト真実」といわれてもピンとこないが、「偽ニュース」なら分かる。真偽の定かでない情報が「ニュース」の見かけをしてネットに出回り、それに振り回されるうちに真実が置き去りにされてしまうような状況を示す言葉が「ポスト真実」だ。
法政大でジャーナリズムを教える著者は、もともと地方紙でサツ回りから鍛えたジャーナリストだが、ソーシャルメディア時代にいち早く対応し、偽ニュース問題にも注目してきた。
新聞社から情報ポータルサイトの運営企業に転職して直面したのは「新聞記者が力を入れる硬いニュースは読まれない」という赤裸々な現実。重要な国際問題の「コソボ独立」でさえ芸能ニュースの50分の1しか読まれなかったと振り返るネットニュースの最初期、新聞各社が対応に戸惑う一方、ヤフーは「新聞少年」を自称し、通信社や新聞社のニュース配信を受けながら独自の実績を積んでいった。ヤフーとの提携は新聞社にとって「毒入りまんじゅう」のようなものだったともいうが、現場のネットニュース担当者の地道な努力にも注目。
新旧のネットニュース編集者に取材し、ネット時代の実像に迫っている。(光文社 800円+税)