「絢爛たる奔流」岩井三四二著
京の三長者のひとりに数えられた角倉家の分家に生まれた了以が、新しい仕事を始めると言う。なぜそんなことをするのかと息子に問われて「五十にして天命を知った」と答えた。丹波の米を京の市場で売れば高く売れる。米を運ぶために大堰川を船で行き来できるようにして船賃を取ろうと考え、大久保石見守に願い出た。約5000両かかる費用を4年で返済し、その後は利益が出ると踏んだ。だが、船で川を下ることはできても、上りは船に綱を付け、人が引いて上らなくてはならない。そのためには川岸の岸壁に綱道をつくる必要があった。
クレーンもショベルカーもない時代に、富士川や高瀬川の開削に挑んだ男を描く時代小説。
(講談社 1750円+税)