“近代オリンピックの父”を支えたのは日本だった!?

公開日: 更新日:

 東京オリンピック開催まで1000日を切った。佐山和夫著「オリンピックの真実」(潮出版社 1800円+税)では、オリンピックはなぜ始まったのか、どうして世界的な大会になったのか、日本人はいつから参加したのかなど、貴重な記録をもとに解説している。

 現代のオリンピックは1896年、フランスのクーベルタン男爵によって第1回大会がアテネで開催されたことは広く知られている。そのためクーベルタンは「近代オリンピックの父」と呼ばれているが、実はクーベルタン以前にも、古代オリンピックに範をとったスポーツ大会を開こうとする試みが各国にあったという。

 スウェーデンで始まった「全スカンディナビア・スポーツ大会」、イギリスの「ウェンロック・オリンピアン・ゲームズ」など、実にさまざまだ。クーベルタンはオリンピックの創始者ではなく、実際には過去の大会から“いいとこ”を集めた、まとめ役だった。

 現在のオリンピックのモットーも、クーベルタンが発したものではない言葉が多い。例えば「健全な肉体に、健全な精神が宿る」。

 これはリバプールのスポーツジムに掲げられていたもの。「オリンピックで大切なことは勝つことではなく参加すること」も、中央ペンシルベニアの司祭が、判定に不服を申し出て再レースを棄権したアメリカの陸上チームを諭した際に使った言葉だという。

 とはいえ、クーベルタンがスポーツによる平和と友愛を目指していたのは紛れもない事実である。その鍵を握るのが、他ならぬ日本だと本書。

 日本人が初めてオリンピックに参加したのは第5回のストックホルム大会だが、実はこれ以前の4大会の参加国は欧米が中心で、いずれも国家主義を露呈しフェアプレーもままならなかった。この事態を中和できる国はないものか。選ばれたのが、東洋の和の国・日本であった。

 クーベルタンが自ら接触を試み協力を求めたのが、講道館柔道の創始者である嘉納治五郎。以降、クーベルタンの「相互敬愛」と嘉納の「自他共栄」の精神が結びつき、現代のオリンピズムが育っていったと考えることができるのだ。

 来るべき2020年までに、オリンピックの役割をもう一度確かめてみたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭