「食と健康の一億年史」スティーブン・レ著、大沢章子訳
現代の健康問題は、祖先が守ってきた食を含めたライフスタイルを変えたことや環境の変化に原因があるのではないか――。そう考えた自然人類学者が、世界中を旅しながら人類の祖先がどのように食べ、どのように生き抜いてきたのか、人類の食と健康との関係を探索しているのが本書だ。
食の歴史をたどれば、地域や時代によって常識は大きく変わる。遠い祖先が日常的に食べていた昆虫や暑さの厳しい地方で食される香辛料、健康にいいと信じがちな果物や野菜の真実、さらには近年始まった水産養殖魚から遺伝子組み換え食物に至るまで、さまざまな研究結果を提示。それらの食べ物がもたらす健康への影響を考察していく。
短期的には立派な体格などの利益が得られても長期的には疾病リスクを高める可能性の高い乳製品や、高齢者にメリットの大きい肉食など、具体的な事例も興味深い。巻末には、普遍的な生き方や食べ方のルールとして、伝統食や歩くことの効能も示している。
(亜紀書房 2400円+税)