男性/若年/非大卒/=「レッグス」に負の遺産が集中
「日本の分断 切り離される非大卒若者たち」吉川徹著 光文社860円+税
イギリスやフランスでは、ワーキングクラスとミドルクラスの階級対立が深刻だ。アメリカ社会は複数のエスニシティー集団に分断されている。「一億総中流」の日本社会は比較的均質で、社会集団間の対立も少ないといわれてきた。
しかし、近年は日本でも子供の貧困や下流老人などが注目され、格差化と貧困化の進行は無視できない。このまま日本社会は、欧米社会のような分断化に向かうのだろうか。
社会学的なデータを読み解きながら、この問題にメスを入れたのが本書だ。日本社会の中心に位置する20歳から60歳までを、男性と女性、(40歳を境として)若年と壮年、それに大卒と非大卒の3基準で切り取ると、「男性/壮年/大卒」から「女性/若年/非大卒」まで、8つのグループに分かれる。
生まれつきで変更不能な性差や年齢差に、日本社会では宿命的な生存条件として機能する学歴差を加えて、日本社会の構成員をグループ分けしたところに、著者の独自な発想がある。そこから導かれるのは、8つのグループのうち「男性/若年/非大卒」の676万人(全体の11・2%)が、他のグループと比較し、極めて不利な生活条件を構造的に強いられている事実だ。
著者がレッグス(軽学歴の男たち)と呼ぶ「男性/若年/非大卒」グループは、平成大不況と日本経済の構造変動による負の遺産を集中的にしわ寄せされてきた。富やチャンスの配分という点で日本社会の最下層に位置するレッグスこそ、草食系、政治離れ、マイルドヤンキーなどの言葉で語られてきた若者たちの正体らしい。
レッグスの境遇を現状のまま放置し続けるなら、団塊の世代が退出したのちの日本社会は、決定的に分断されていくだろう。