「ストーカーとの七〇〇日戦争」内澤旬子著
ストーキングの始まりは、交際相手とのごくありふれた別れ話だった。遊びに行きたいという相手の要求を拒否した途端、電話が鳴りやまなくなった。相手は低姿勢で謝り、やり直そうというメールを送り続けてきたが、これ以上連絡するなら警察に相談するという返事を送った途端に態度が一変。これまでの交際内容を暴露してやる、浮気相手と勝手に決めつけた相手のところに乗り込んでやるなど、一線を越えた脅迫文を送ってくるようになった。念のため警察に相談に出向いた著者は、相手には前科があり、しかも偽名を使っていたことを知ってがくぜんとする。そこから途方もなく長い、ストーカーとの壮絶な戦いが始まった……。
本書は、ストーカー被害者になった著者の体験を赤裸々に描いたノンフィクション。ネットでのやまない中傷や身の安全を考えた転居、弁護士や警察とのやりとりなど、当事者にとって恐怖と混乱でしかない事柄が次々と勃発。被害者が安全な日常を取り戻すためには、ストーカーを単に罰するだけでなく、ストーキングをやめられない加害者への治療が必要であることを訴えている。
(文藝春秋 1500円+税)