「八本目の槍」今村翔吾著
秀吉が柴田勝家を破った天正11年の賤ケ岳の戦いで武勲を上げた「賤ケ岳七本槍」の一人、加藤虎之助(清正)。肥後半国19万5000石の大名となったが、所領が大坂から遠いのが不満だった。出世の道が断たれたと感じたのだ。
これを進言したのが佐吉(石田三成)だと知って恨んでいたのだが、秀吉が唐入りを考えていると聞いて、まだ戦で手柄を立てる機会はあると望みをつないでいた。ところが唐入りの支度に追われていたとき、佐吉が夜半に訪ねてきた。そしてこう言った「単刀直入に申す。戦に負けてくれ」。(「一本槍」)
「七本槍」と呼ばれた武将のそれぞれの生き方と、八本目の槍、石田三成の本当の姿に迫る7編の連作小説。
(新潮社 1800円+税)