「上級国民/下級国民」橘玲著
ネットに蔓延(まんえん)する「上級国民/下級国民」という表現には、努力によって階級を移動できる「上層階級/下層階級」とは異なり、個人の努力が役に立たない冷酷な自然法則のようなものというニュアンスが込められている。著者は、いったん下級に落ちてしまえば、下級として老い、死んでいくしかなく、幸福な人生を手に入れられるのは上級だけとの思いを、多くの日本人が抱いていると指摘する。
本書は、バブル崩壊後の労働市場がどのように下級国民を生み出したのかを解説。さらに下級国民が共同体からも性愛からも排除され、結果的に下級は生涯独身、上級は事実上の一夫多妻を実現している事実を明らかにする。日本だけでなく世界中で進行する、こうした分断の正体を論じた社会論。
(小学館 820円+税)