「80’sエイティーズ」 橘玲著
「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」などに代表される投資や経済をテーマにした指南書や「マネーロンダリング」などの小説で定評のある著者による、初めての自叙伝的エッセー。
何をやるべきかを模索していた大学時代を経て、日本がバブル期へとかけのぼっていった80年代、その崩壊を目撃した90年代に至るまでの時期を、著者の青春と重ね合わせながらつづっている。
大学でロシア文学を専攻したがために就職先がなかなか決まらなかったこと、マクドナルドのバイトで出会ったある人の一言をきっかけに出版社に職を見つけたこと、ティーン雑誌の編集長時代、出版差し止め仮処分事件や差別表現についての体験、オウム真理教の地下鉄サリン事件の余波など、個人の回顧録にとどまらず、80年代の日本の空気を世の中の動きとともに紹介していく。
海外宝くじビジネス、ドラッグカルチャーなどにも触れられており、著者の視野の広さの秘密を垣間見ることができる。(太田出版 1600円+税)