「大雪物語」藤田宜永著
豪雪に見舞われた長野県の別荘地K町を舞台に老若男女6人の人生が交錯する連作短編集。
派遣切りに遭い、寮も追い出されてしまった23歳の良太は、盗んだバイクでひったくりを繰り返す。姉との電話で警察に追われていることを知った良太は、土地勘のあるK町に向かう。かつて両親がK町の別荘地にある保養所の管理人を務めていたのだ。
無人の別荘に忍び込んだが、豪雪で電線が切断し停電、薪も食料も底をついてしまう。ナイフを懐に、煙突から煙があがる近くの別荘のドアをノックすると、出てきたのは老婆だった。敏子という名の老婆は、良太のウソを疑わず、食事や寝る場所を提供してくれる。雪はその後も降り続き、別荘地は完全に孤立。良太は敏子の別荘に足止めされる……。
(講談社 660円+税)