「田舎のポルシェ」篠田節子著
コロナ禍で勤めていたデイサービスセンターが自主休業になったので、春江は浜松に向かって出発した。イベントが中止になったため、観客を入れないことを条件に湖月堂ホールが3時間20万円で借りられると、孫の大輝が教えてくれたのだ。音響、照明設備とエンジニア付き! そこで憧れの宮藤珠代が歌った歌を歌うのだ。
大輝がシルク光沢のドレスとロケバスも用意してくれて、春江は備え付けの「女優鏡」でメークした。曲はトスカが歌った「歌に生き愛に生き」。来月、手術を受けるので、生命保険の一時金をステージで使うことに決めたのだ。(「ロケバスアリア」)
他にポルシェ、ボルボなど、車を舞台に繰り広げられる3つの物語。
(文藝春秋 1760円)