「特殊清掃人」中山七里著
勤めていた事務機器メーカーが突然倒産してしまった秋廣香澄(あきひろかすみ)は、必死の転職活動の末に6社目でようやく五百旗頭亘(いおきべわたる)が代表を務める「エンドクリーナー」に採用された。
業種は清掃業だが、なぜか基本給も手当も驚くほど高い。話を聞いてみると、清掃業といっても「特殊清掃」という種類のもので、ゴミ屋敷や死体の発見された部屋のハウスクリーニング、供養や遺品整理、家具の買い取りやリフォーム、物件買い取りまで請け負うらしい。さっそく翌日から、香澄は五百旗頭に連れられ特殊清掃の現場に足を踏み入れる。そこには予想を超えた異様な光景が広がっていた……。
2009年に「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して以来、数々の推理小説シリーズで人気の著者による最新作。本書には、輸入車ディーラー勤務から引きこもりに転じて孤独死した30代女性、浴室で突然死した会社社長など、さまざまな死体の発見現場が登場する。
特殊清掃人の仕事を通して、死者が生前に抱えていた状況が見えてくるヒューマンミステリーだ。 (朝日新聞出版 1760円)