「清浄島」河﨑秋子著
昭和29年の初夏、北海道立衛生研究所の土橋義明は最北の離島、礼文島に赴任することになった。
礼文島には寄生虫のエキノコックスによる感染症が発生し、死者が出て「呪い」の島と恐れられていた。道立衛生研究所が参加した現地調査で、猫の腸内から寄生虫が発見されたため、感染経路の調査と感染予防の啓発を行うことになったのだ。
研究所として与えられた旧日赤診療所の手術室に荷物を運び込んだとき、船泊漁協から3人の男がやってきた。そのひとりの高峰は、土橋に、来週から始まる昆布採りの時期に解剖をすると昆布が採れなくなるから解剖しないでくれと要求した。
離島で感染症と闘う研究者を描く長編小説。
(双葉社 1980円)