「名もなき山へ」深田久弥著
「名もなき山へ」深田久弥著
名著「日本百名山」の著者による随筆集。
「わが国にはどこへ行っても山の見えない所はない」と始まる「山と日本人」と題された一文では、どこの都市や町村にも住人を守護神のように見守る山があり、その山を仰ぎ暮らす人々は知らずのうちに影響を受けていると記す。岩手人の粘りのある性格は岩手山に、越中人の進取的気性は剱岳の鋭く激しい岩の峰によって形成されたと。そんな山の影響が一番大きな例として日本人と富士山の関係をつづる。
以降、日本百名山の候補の中から、あまり知られていない山々を語った章や、山の恵みについて語った一文、新道が出来ても古くからある登山道を歩く醍醐味、そしてヒマラヤなど未知なる山への思いまで。すべての山愛好家に贈る珠玉の作品集。
(山と溪谷社 1100円)