「東京難民」佐々部清監督
「特に若者は助けてと声を上げない傾向にあると聞きました。映画学校の学生や成人したばかりの自分の娘たち『さとり世代』を見て思うのは、熱くない、どこか冷めているということです。僕も若い頃は金欠で、風呂なし共同便所の4畳半住まいでしたけど、仲間と安酒を飲みながら、朝まで夢を語っていた。若者たちが未来も語れなくなっている社会、日本の今のシステムに根本的な問題があるとしか思えません。突き詰めれば教育、彼らを育てた我々大人の責任ですよ。今回はこの国を動かしている人たちにも見てもらいたいと考え、安倍首相にDVDを送らせてもらいました。まだ公にしていませんが、昭恵夫人からコメントを頂いています」
――見て欲しいところ、作品を通じて訴えたいのは何ですか?
「株価や五輪に浮かれるより前にまずは元の世界に戻す。それが先決ではないかということです。震災からの復興、原発問題などをないがしろにしてはならない。子ども世代、孫の世代にツケを回してはならないと思うのです。中高年の同世代にはもう少し頑張りましょうと言いたいですね。とはいえ、フリーランスの僕自身も、昨年秋から収入がなく、暮れも正月も家でじっとしているしかないような、東京難民に近い状況です。映画では学生の転落を描いていますが、我々の世代にとっては“明日は我が子”でもあるわけです。最後の最後に少しだけ救いを持たせました。社会派を狙ったわけではありませんけど、現実にも救いや希望がなければ嘘ですよ」