稽古後は仲間と激論 流山児祥さん「演劇と酒とは不可分」
親父と初めて外で飲んだのは青山学院大に進学して間もなくで東銀座・三原橋の袋小路にあった、確か「ビルゴ」って名前の小さなバー。出されたのがバーボンだった。店のママが親父の“彼女”だったらしい。親父は俺が23歳の時、そのママが新たにオープンした新大久保の飲み屋で急死してね。死因は心不全。労働運動に邁進した活動家でもあった親父らしい、破天荒な最期ともいえるよ。
そんな経験があるから俺にとって酒といえば、日本酒でも焼酎でもなく、ウイスキーかバーボン。松田優作、原田の兄貴(原田芳雄)に倣い、ジャック・ダニエルにこだわってたのは80年代だった。俺にとって演劇と酒とは不可分でね。酒はコミュニケーションツールであり、イマジネーションの源。20代のころから今に至るまで稽古後は酒を飲みながら社会や芸術について激論を戦わせてる。
そういえば、70年代から90年代にかけて一世を風靡した東京キッドブラザースの主宰者・東由多加さんは凄かったよ。足元に缶ビールの空き缶を10~20本転がしながら徹夜の稽古に目を光らせてた。最後は本人が寝ちゃって、ようやく役者が解放されるってオチなんだ。