サカイCMの名脇役・徳井優を変えた井筒監督“小田原事件”
振り返ると僕はその年に結婚してるんです。俳優としてのキャリアは10年になってたけど、まだ脇役の脇役。とても食えません。そんな時でしたから、監督は演技指導を通じてハッパをかけてくれたんじゃないか。「おまえの思う通りに思いっきりやれよ」というのはいい芝居をしようとかうまくセリフを言おうとかやない。「役づくりは大切やけど、頭で考えず思いっきり芝居を楽しめ」ということです。
そんな苦い経験があって翌年にオンエアされたのが注目を浴びるきっかけとなった「引っ越しのサカイ」のテレビCM「エレベーター編」。これは当初予定していた2本が早く撮り終えたので、余った時間を使って、その場のノリで振り付けを考え、ハッチャケて面白おかしく演じたんです。そうしたら大評判。05年まで内容を変えて続いた長寿CMになりました。
幸運に恵まれたのは小田原の一件があったからこそ。あの時、監督がとことんダメ出ししてくれたからといっても過言ではない。その結果、今こうして役者も続けていられるんですから、足を向けて眠れません。