「これはもうテレビドラマはやめた方がいいのかなと…」
碓井 台本がダメって、どういうことですか。
倉本 そもそもシナリオライターというのは、2つの役割がありましてね。一つはプロットを作る仕事。そして、もう一つは撮影台本を作る仕事です。
碓井 ドラマや映画でいうプロットは物語の筋、つまりストーリーですよね。大きく分ければ原作ありのものと、原作なしのオリジナルと2種類あります。どちらの場合も、そのプロットを基に書かれた撮影台本をベースにしてドラマが作られていく。
倉本 ですが、日本では原作ありも原作なしも「シナリオライター」とひとくくりで呼ばれている。実はそれこそがテレビドラマの弊害の一つになっている。僕らは映画からこの世界に入りましたが、当時の映画会社では若造がいきなりオリジナルシナリオを書くなんてあり得なかったんですよ。
碓井 ある程度キャリアを積まないと、オリジナル脚本は書かせてもらえなかったと。
倉本 十数年は経験を積まないと駄目ですね。僕自身もシナリオライターになった時、作家といわれるのはまだ無理だ、まずはシナリオ技術者になろうと思ったものです。とにかく右から注文が来ても左から注文が来ても受ける。そして意向に沿って膨らませ、形にする。当時の映画会社にはプロットライターというものがいまして、企画部が筋までは完璧に作ったものを脚本家に渡す。だから、僕らの仕事は撮影台本を書くことに徹した。分業の訓練を受けてきたので、いまとは全く違うわけですね。