北千住「千住の氷見」で“係”のお姐さんを味方につけて…安心感の中、大箱酒場の醍醐味と幸福感を味わう
大箱の老舗大衆酒場にはベテランのヤリ手お姐さんが多い。
常連客の顔を見ただけで何を注文するかすでに分かっていて、席に着くと同時に「ホッピー、黒よね」みたいな。たまには瓶ビールでもと思っていても「ハイハイ」と素直に従う方がこういう店ではうまくいく。
事ほどさように酒場には快適に飲むための流儀が少なくない。それを知らずに一人で飲みに行くと、注文のタイミングに困ることがある。デカい声で「すいませ~ん!」って叫ぶのもみっともない。できれば目が合っただけで、サクッと注文したい。だから最初にカウンターに案内してくれたお姐さん一人に目をつけたら、他の人には頼まない。すると気にかけてくれるようになる。メニューを眺めていると、気が付かないうちに後ろに立っていてくれたり。こうやって味方になってもらうと、居心地よく飲むことができる。「千住の永見」もそんな大箱大衆酒場だ。
久しぶりに訪れたアタシは中に入ると、まずはお姐さんと目が合うのを待つ。「お一人?」。アタシに気が付いたお姐さんに人さし指を立てると、カウンターの端に案内された。
入って右側には長いカウンターがあり、左側には8人掛けの長テーブルが7、8台。2階には座敷もある。100人は入る大箱酒場だ。
案内してくれたお姐さんをご指名したつもりで、勝手にアタシの係になっていただく。「お酒ちょーだい」「冷、お燗?」「冷でお願い」「常温ね」。そうそう。広島の銘酒一代(240円=写真)とイカの沖漬け(420円=同)と名物の千寿揚げ(470円)をもらう。この沖漬けがあればいくらでも飲める。千寿揚げはネギがたっぷり入った自家製さつま揚げ。熱々を頬張り酒をグビリ。サイコ~。お酒を飲み干し、お代わりを注文すべく振り返ると、そこには先ほどのベテラン姐さんが待機していて「お代わりネ」。こうなるとシメタもの。一気に居心地がよくなる。多くの酔客の中に溶け込みながらも自分を気にかけてくれる人のいる安心感。まさに大箱酒場の醍醐味であり一人飲みにしか味わえない幸福感だ。