レイザーラモンRG出渕誠さん<3>「家を継ぎたい」とウソ
営業マンの仕事は午前9時から午後5時までだったが、入社3カ月を迎えるころには、昼間に芸人の仕事が入るようになった。テレビ番組の依頼も入り、掛け持ちできないほど多忙に。芸人で食べていくと決意し、大阪トヨタを辞めた。
「営業所長に辞意を伝えるときに、すぐに辞めることに引け目を感じて、『親が体調不良で家を継がないといけなくなった』とウソをついたんです。すると、『怒らんから本当のことを言ってくれ』と。バレていましたね。それで、学生時代にお笑いで賞を取っていたこと、これからは芸人一本でやりたいと本音を伝えました」
その際の所長の言葉が今も脳裏から離れない。会社員生活で、最も記憶に残ったやりとりだった。
「『俺も、今の職業になるまで何度も職をかえてきた。やっと自分に合う仕事に出合って、続けていたら今の地位に就いた。コレだと思ったら、続けろよ』と温かく送り出してくれました。課長も応援してくれました。当時、セルシオの購入者しかもらえない高級時計も、『特別やぞ、頑張れよ』とはなむけにプレゼントしてもらったり……。これは今でも大事に持っています。トヨタは、初任給も高かったし、休みもきっちりあって恵まれた環境でした。入社時に作ったトヨタのクレジットカードは、今でも使っていますよ」