著者のコラム一覧
片岡たまき

神奈川県平塚市出身。元RCサクセション・マネジャー兼衣装係。夫は「パスカルズ」のバンドマスター、ロケット・マツ氏。著書に「あの頃、忌野清志郎と」(宝島社)。

カラオケで「お富さん」を歌うと、ママが「ヘッタやなぁ」

公開日: 更新日:

 長いツアーでは、移動日が休日で、貴重な一日となっていたそうだ。

「ファンの目をはばかってか、清志郎さんが外出することはめったになかったのですが、行きつけの店はいくつかありました。例えば、広島市内のあるお好み焼き屋、札幌の『時計台』というラーメン屋。どちらもホテルから徒歩1分の距離です。これが精いっぱい。ある時、『黒豆が声にいいから買ってきて』と、清志郎さんからリクエストが。デパ地下で丹波産の煮豆を買って届けると『おつりはアメでも買いたまえ』と、笑顔でお駄賃をくれるのです。そう言ってもらうと、こちらも軽い感じで受け取りやすいですよね。清志郎さんの気遣いでしょう」

 ロックのカリスマは、夜の繁華街に繰り出したりはしないのだろうか。

「89年かな、大阪でのオフ日の夜、清志郎さんの部屋に電話が入って、石田長生さん(Vo、Gt)からだった。すっかり出来上がった金子マリさん(RCにコーラスで参加)と飲んでる店に『迎えにきて~』と。そこで清志郎さんと私は、名物ママの店に行きました。着いてみると、マリさんを連れて帰るどころか、ママが清志郎さんにカラオケを歌えと勧めるのです。しぶしぶ清志郎さんが歌った曲は、なんと『お富さん』。ロックスターの歌う春日八郎です! ママはしみじみとひと言、『あんた~、歌がヘッタやなぁ』と(笑い)。キーが合わないんですよね、普通の歌は。ふざけて歌っているように聴こえてしまう。清志郎さんもウケちゃって。あの夜、カラオケ好きになったのかも」

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