石橋保が好演「カスリコ」人生を狂わせる賭博の本質を活写
カスリコという言葉を知っている人は少ないだろう。賭場で、客の世話などをして僅かばかりの祝儀をもらう仕事のことだ。
その言葉をタイトルにした「カスリコ」という作品が22日、公開となる。舞台は1960年代の高知。カスリコは高知で使われた隠語という。モノクロ映像が美しい力作だ。
名の知れた料理人・岡田は、手本引き賭博で失敗し店などを失う。憔悴(しょうすい)する岡田の前に現れ、カスリコを世話してくれたのが地元ヤクザの幹部だ。岡田は「(カスリコは)物乞いと同じだ」とカスリコの先輩から言われるも、家族への思いを胸にその仕事を続けていく。
賭博で人生が狂うとどうなるか。本作は、賭博をするには最底辺の生活を見据えた覚悟が必要であること。さらに、賭博への尽きぬ誘惑は簡単には断ち切れるものではないことも描く。本作が見事だったのは、その双方を説得力ある演出と物語の展開でとらえたことだ。
石橋保が岡田を演じた。これまで石橋はちょっと頼りなげな優男のイメージが強かったが、「カスリコ」では一転、表情の随所に暗い影を漂わせ、少し太めになった体にうらぶれた風情をにじませ、実に味があった。堂々たる主演ぶりだった。