吉右衛門休演の舞台 代役・幸四郎に歌舞伎役者の底力見た

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 9月の歌舞伎座は初代中村吉右衛門を顕彰する秀山祭。当代の吉右衛門が主宰しているが、16日から休演という事態になった(19日から復帰)。

 たまたま17日のチケットを買っていたので、吉右衛門が不在の舞台を見ることになった。代役は幸四郎と松緑で、これが予想以上に素晴らしい。

「沼津」は生き別れの父と息子が偶然に出会い、やがて父子だと分かる話で、年上の役者が息子、年下の役者が父親を演じることが多く、今月も、年長の吉右衛門が息子の十兵衛、年下の歌六が父の平作を演じていたが、幸四郎が十兵衛を代わった。

■3日だけの幻の初役で完璧なセリフ

 幸四郎はこれまで十兵衛を演じていないどころか、この芝居に出たこともないが、セリフは完璧だった。これは歌舞伎役者の底力だ。積み上げた技巧で若く見せていた吉右衛門とは違い、自然な十兵衛になり、前半の珍道中、中盤のミステリー的謎解き、最後の悲劇まで、意外の連続で変わっていく主人公の心情と幸四郎自身が、いきなりの代役で手探りで演じている感覚とが、奇跡的にうまくシンクロして、見事な舞台となった。ハプニングで得た役だが、当たり役となるだろう。

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