著者のコラム一覧
原田曜平マーケティングアナリスト・信州大学特任教授

1977年、東京都生まれ。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞受賞。「マイルドヤンキー」「さとり世代」「女子力男子」など若者消費を象徴するキーワードを広めた若者研究の第一人者。「若者わからん!」「Z世代」など著書多数。20年12月から信州大特任教授。

令和初の真打ち昇進 イケメン落語家・瀧川鯉斗の異色経歴

公開日: 更新日:

 対談の後編は鯉斗さんの前座時代のエピソードや令和時代の若者論、そして落語界の課題などについて訊く!

原田「前座修業は厳しかったですか?」

鯉斗「住み込みではなく、週6で鯉昇師匠の元に通いました。落語家は毎日着物を着るので、まずは着物の着方や畳み方から覚えないといけないのですが、自分でできるようになるまでは大変でした。一応、給金は出て、1日1000円。1カ月で約3万円。それが風呂なしアパートの家賃。師匠たちにくっついていれば、ご飯は食べさせてもらえるので飢えることはありません(笑い)」

原田「若いのによく我慢できましたね」

鯉斗「落語界はアルバイト禁止なんです。『バイトをする時間があるなら落語を覚えろ』と怒られます。お笑い芸人の世界とはちょっと違いますね」

原田「縦社会ゆえの独特の人間関係や厳しい修業もあると思うんですけど大変だったのでは」

鯉斗「どんなことも落語に通じると思えばこそです。弟子になるときに『暴力と盗みは破門だ』と言われていたので、反抗して殴ったりすることももちろんありません(笑い)。18歳で入門して25歳で二つ目に。昨年真打ちに昇進しましたが、暴走族もコックのアルバイトのときもそうで、これまで縦の関係を重んじる世界でしか生きていないので落語界の独特のしきたりや縦社会もまったく苦じゃないんです。好きで身を置いているわけですから」

原田「最近の若者は苦労するのを嫌がる傾向がありますけど正反対ですね」

鯉斗「落語って肉屋とか魚屋とかと違って生活になくてはいけない仕事ではない“水物”の商売なんです。なので、新しく入ってくるプレーヤーに対しても『辞めたければどうぞ』なんです。辞めればライバルは減りますし、現に辞めていく人もたくさんいます。今の若い子たちは、叱られるとすぐに辞めてしまったり、『うわっ、ウゼェ』と思って拒否したりする子が多いですよね。でも、僕は時には上からガツンと言われないと成長できないとも思っています」

原田「発想が昭和ですね(笑い)。僕は2014年に『マイルドヤンキー』という言葉を定義して流行語にもなりましたが、鯉斗さんがヤンキーだった時代と今の時代のヤンキーでは何か変わった点はありますか?」

鯉斗「僕は今36歳ですが、僕たちの時代のヤンキーは基本的な挨拶や『ごめんなさい』『ありがとうございます』『よろしくお願いします』など最低限のコミュニケーションは取れる人が多かったと思うんですよ。今、ヤンキーと呼ばれている子たちって、上下関係がきちんとしていないからか、挨拶もできない子が多い気がします。外見はイケイケでヤンチャかもしれないけど、感性的には根暗な感じでパッションもない。もちろん個人によりますけど、芯がない感じはしますね」

原田「令和を牽引する落語家として、令和の時代の落語界はどうなっていくでしょう」

鯉斗「確かに一部では落語ブームなのかもしれません。人気の落語家には多くのお客さんがついていますし、最近、自分と同世代やもっと若い20代のお客さんも来てくれているように感じます。ただ、全体的にはまだまだ盛り上がっていない。もっと多くの人たちに生で落語を見てほしいし、そう気張らずに寄席に足を運んでほしいですね。自分というフィルターを通して、落語って面白いなぁ、味わいがあるなぁと感じてもらえればうれしいです。僕自身は色気のある人情噺を突き詰められたらと思っています」 

(構成=高田晶子)

▽瀧川鯉斗(たきがわ・こいと)落語家。落語芸術協会所属。1984年生まれ。愛知県名古屋市出身。高校時代からバイクに傾倒し、暴走族総長を経て2002年、役者になることを夢見て上京。新宿の飲食店でアルバイトをしているときに現在の師匠・瀧川鯉昇の落語独演会を見て弟子入りを直訴。05年に前座。09年4月、二つ目昇進。19年5月、令和初の真打ちに昇進。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  4. 4

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  5. 5

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  1. 6

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  4. 9

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  5. 10

    フジテレビを襲う「女子アナ大流出」の危機…年収減やイメージ悪化でせっせとフリー転身画策

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…