女優・鈴木希依子さんは老舗割烹を継ぎ「5代目若女将」に
竹内力主演の映画「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説」のヒロインに抜擢されたのは19年前。その後、ドラマ「相棒」シリーズなど、数々の話題作にも出演した。本日登場の鈴木希依子さん(42)だ。だが最近、テレビでは見ない。さて、今どうしているのか?
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千葉県木更津市。アサリと海鮮料理が名物の割烹「宝家」へ行くと、ちょうど駐車場に紺のアウディがすべりこんできた。ハンドルを握るのは鈴木さん、その人。キリッとした着物姿で降りてくるや、店内奥のテーブル席へ案内してくれた。
創業明治30年(1897年)と記された名刺には“若女将”とある。
「私は5代目になりまして、お店を手伝い始めたのは11年ほど前。以来、若女将の仕事を優先しているので、木更津や千葉を盛り上げる番組、ドラマ、イベント以外は、なかなか芸能活動ができないんです」
転機となったのは?
「社長だった父が脳内出血で倒れてしまい、父や女将である母を支えなければ、と思ったからです。都内の自宅から車で1時間ほどなので、忙しい時だけ通えばいい、と最初は思っていました。ところが系列ホテルとともに23億2000万円もの負債を抱えていることがわかり、中途半端ではいけないな、と。あの時は、経営悪化で借金返済が難しくなり、それが父の心労を招いたのです」
幸いにして、ホテルは地元企業がいい形で買い取り、支援者と金融機関のバックアップもあって、宝家はもちなおし、業績も改善した。
「ホテルの赤字の原因は、長年のデフレ不況や宴会縮小といった経営環境の変化に対応できなかったため。それで、宝家はさらにお店のプロモーションをすることにしたのです」
そのひとつが15年前から始めていたインバウンド客招致の強化。6年前からはイスラム教徒も安心して食べられる“ムスリムフレンドリー”メニューを提供している。
「“ムスリム――”は、食材も調理もイスラム教の戒律を厳守した“ハラル”が基本。当時の板長に研修に行ってもらい、専用の調理器具を用意しました」
努力の甲斐あって、同店はインドネシア大使館のお墨付き。さらに、SNSで情報が拡散され、他のイスラム諸国からも個人、団体客がやって来る。
「東京五輪を控えた今、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)のメニューも要予約でお作りしようと思っています」