「パラサイト」で注目 筆者が経験した半地下生活のリアル
■日光は窓際から少し見える程度
確かに窓際から人が歩くのを見ながら生活するのは違和感があったが、映画に描かれているような、ジメジメしてしみったれた雰囲気はなく、むしろ清潔感にあふれた快適な空間だったと思う。日当たりは悪いというか、日光なんて、窓際から少し見える程度だったから、常に電気はつけていた。もちろん洗濯物なんか干せるわけがない。年中部屋干しだったが、寒いお国事情もあり、韓国はもともと屋外で干す習慣がない。たとえ上層階に住んでいても、部屋干しが当たり前だ。
さらに、韓国には床暖房のオンドルというシステムがあり、冬でも寒さはみじんも感じなかった。床にパイプを通し、ボイラーを利用して熱湯を循環させる構造なので、かなり暖かい。床の場所によっては暑いぐらいだった。夏は日本ほど蒸し暑くないので、エアコンなしでも扇風機だけでどうにかしのげる。
欠点を挙げるとすれば、水回りの脆弱さか。風呂がなく、シャワーとトイレが一緒で、日本人からすると常にユニットというのは気が引けた。なんといっても脱衣所がなく、そして、やはり、少しカビ臭い。排水も不十分だった。水浸しのところで着替えるため苦労した記憶がある。
ただ、半地下で暮らす他の友人を見渡しても、「パラサイト」に出てくるようなみすぼらしい人はいなかった。というか、半地下であれ、皆で楽しく飲み明かしていた日々が懐かしく、半地下にマイナスのイメージはあまりない。
(取材・文=韓国芸能ライター・松庭直)