歌舞伎とは違う「太神楽は努力が報われる仕事なんです」
狭き門ともいえる。
「2期生で卒業できたのは1人だけ。それが弟子の仙三です。卒業生には自分で師匠を選べる特権が与えられる。ハードルが高い芸ですから、弟子入りしてから高座に上がるまで時間がかかります。まず1年間、寄席の楽屋で前座修業をする。研修生時代も含めて自分との闘いですね。それに打ち勝って太神楽師になれば、努力したことが報われる仕事なんです」
研修制度は7期続けられ、20人の太神楽師を輩出した。その後、やめた者もいて、12人が現役で活躍している。
「この制度はしばらく休んでましたが、来年から再開する予定でして、あたしもまた後継者育成のお手伝いをするつもりでいます。芸界は歌舞伎の世界と違って、閨閥がないので公平ですよね。研修生募集が再開されたら、多くの若者が応募してくればいいと期待してます」
目を輝かせて語る仙三郎が若々しく見えた。(つづく)
(聞き手・吉川潮)
▽鏡味仙三郎(かがみ・せんざぶろう)1946年、岩手県盛岡市出身。55年に12代目家元・鏡味小仙に入門。前座名「盛之助」。57年、池袋演芸場で初舞台。73年に故・鏡味仙之助とコンビ結成。2002年、鏡味仙三郎社中を結成。趣味はゴルフとオートレース。近著に「太神楽 寄席とともに歩む日本の芸能の原点」(原書房)がある。