コロナ禍に芝居5本観劇 「今」を映す舞台に心揺さぶられた
座・高円寺にて渡辺えりと木野花共演の二人芝居「さるすべり」。稽古期間もなく、ありものの脚本か朗読劇なのかと思ったら、新作書き下ろしの骨太な演劇。「八月の鯨」をベースにコロナ禍の老姉妹の古い屋敷での暮らし。ときには素の2人に戻り脚本を批判したりしながら、軽いタッチから重い芝居に移行していく。還暦過ぎの2女優の丁々発止がたまらない。
続いてまた本多劇場三夜、春風亭一之輔はコロナネタのまくらでくすぐり、これぞ「らくだ」という、ブラックでありながらなぜか人間というものが愛おしくなる「らくだ」。入江雅人は「グレート一人芝居三本立て」。「500」は、なぜか飲み会の人数が500人まで膨れ上がり、駅前で解散を告げるうちに、コロナ禍の政府にアジり始める男。その叫びはあまりにストレートであるが故に深く心をえぐられる。
小沢道成と峯村リエの二人芝居。1人暮らしの寂しいOLの家に毎日来る宅配便の青年。人との距離感がわからず、時に置き去りにされた女性が徐々にストーカー化していく。その部屋に来て30年の彼女の壊れゆく人生を一瞬にして見せる峯村。被害者から加害者、そして共犯者へ移りゆく姿を小気味よく見せる小沢。終わり具合も感動的であった。
芝居がどれも短かったせいだろうか、今回の連続観劇は同じテーマで書かれた短編小説のアンソロジーを読んだ趣であった。それぞれがリンクしそれぞれが心に突き刺さった。それは見る者も同じ問題を共有しているからか。今でなければ味わえない体験であった。