必需品の張り扇は手作り 大切に使っても2カ月でダメになる
「実は張り扇はその人その人の手作りです。踊り用の舞扇子を2つに割り、『西ノ内』という茨城名産の和紙を幾重にも貼っています。扇の上部だけに糊(のり)をつけて幾重にも巻くんです。ただし、下部は糊をつけません。そうして幾重にも巻くと空間ができて、打つといい音が出るんです」
その人なりに工夫もしているという。
「女性の講釈師は色紙を貼ってかわいいものを作ったりしています。ただ基本は自分の声に合わせた音が出るような張り扇を作ることです。私は声が低いので重厚な音が出るように作っています。私がポンポンという重厚な音なら伯山はパパーンと早い音です。高座を見てもらえば私の張り扇と伯山の張り扇の違いがはっきりわかると思います。張り扇は大切に使っていても2カ月ぐらいでダメになっちゃう。手元が壊れるんです。なので、つねに4、5本を予備で持っています」
釈台はどうか。
「釈台はそれぞれの寄席で用意しているものを使います。地方や寄席以外の時は旅用の釈台を持っていきます。講釈師はみんな自分の組み立て式の釈台を持っています。私は3台です」
メリハリの利いた張り扇の音に引かれ、講談に興味を持つ人が増えている……そんな一面があるかもしれない。
(構成=浦上優)