一事が万事でいい加減に生きてきた 修羅場の数は負けない

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 確かに、三郎は並の役者では経験しようもない修羅場をくぐってきた。だから、どんな役を演じても、存在感と説得力があるのだと思う。

「近年のテレビドラマは、若手の人気俳優を主演に押さえるのがプロデューサーの仕事みたいで、年を食った役者の出番が少なくなった。じいさん役でよく出てるのは、づめさん(橋爪功)にえもっちゃん(柄本明)、笹野高史、岸部一徳くらいのもんでしょ。俺なんか、出る幕がないよ」

 それでも三郎は舞台と映画における名脇役のひとりである。

「今、映画出演のオファーが来てるんだけど、これがやくざの組長役なんですよ。若い頃は斬られ役とかチンピラ役だったのが、とうとう親分の役が来る齢になったんだねえ。もっとも、来年は75で後期高齢者だ。我ながら、『うまいこと齢を取ったなあ』と自負してます。若い頃は気が短くて喧嘩っぱやかったけど、齢の功ってやつかな。ずいぶん丸くなりました」

 若い時分、喧嘩をしては職を変えていた男が、齢を重ねて柔和になって、穏やかに今を語る笑顔はいいものである。

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