一事が万事でいい加減に生きてきた 修羅場の数は負けない
三郎のように半世紀以上も芸能界にいると、思わぬことに遭遇する。
「かみさんと婚姻届を江東区役所に出しに行った時、保証人の署名と捺印をもらうのを忘れちゃった。出直すのも面倒だから、順番待ちしてた若者に、『おにいちゃん、ここに名前を書いて印鑑押してくれないか』と頼んだ。若者は、『コント・レオナルドの三郎さんですよね』と俺を知ってた。『そう。実は婚姻届なんだ。頼むよ』と言ったら、快く保証人になってくれて助かったんだ。それから何十年もたってから、テレビ朝日で社員に声をかけられて、『石倉さんは僕がいなかったら結婚できなかったんですよ』と言われた。何言ってんだ、と思いますよ。そしたら、婚姻届を出した時に保証人になってくれた若者だというから驚くじゃないですか」
こういうことがあるから人生は面白い、と三郎は笑った。
「一事が万事で、いい加減に生きてきたんだね。ただ、修羅場をくぐった数だけは人に負けていない。生きるか死ぬかの修羅場をくぐり抜けてきたから、こんどのコロナ禍にしても、大変な事態だけど、ジタバタしないでいられる」