プロデュースに差…客の気持ちで選べぬ松竹vs選べる海老蔵
正月公演の幕が開いた途端、緊急事態宣言。しかし、昨年春のように公演中止にはならず、終演を20時前に繰り上げるなどの処置で公演は続くようだ。
歌舞伎座は3部制。第1部は完売の日も出ている。第1部前半は尾上松也以下、浅草歌舞伎のメンバーが出て、曽我ものの舞踊劇「壽浅草柱建(ことほぎてはながたつどうはしらだて)」。浅草歌舞伎が中止になったので、歌舞伎座に出ることになった。若いというのはいいもので、それだけで舞台は華やぐ。だが、どうせなら、「寿曽我対面」を、そのままやらせればよかったのではないか。
後半は市川猿之助の舞踊劇「悪太郎」。中村福之助が相手役に抜擢され、見事に応えている。
第2部は暮れに亡くなった坂田藤十郎を偲ぶ、息子の鴈治郎と扇雀が出る「夕霧名残の正月」と、中村吉右衛門、中村雀右衛門、中村梅玉で「仮名手本忠臣蔵」の七段目。
第3部前半は「菅原伝授手習鑑」の「車引」。松本白鸚・幸四郎・染五郎の父子3代で三つ子の兄弟を演じるという趣向。後半は、中村芝翫と片岡愛之助の、落語をもとにした「らくだ」で、愛之助があえて大阪弁で演じている。大阪弁のとぼけた味と乱暴さが効果的だ。しかし、笑える劇ではあるが、死人が物語の中心の話なので、正月に上演するもの、しかも病気で死者続出の時期の演目としては疑問。