笛の腕前を見込んだ家元が「落語家、やめられませんか?」

公開日: 更新日:

 一朝は落語界で「笛の名手」として知られる。前座時代から習っていたことは前に記したが、その後も稽古を続けたわけだ。

「祭り囃子が好きで始めたのが、二つ目になって本格的に習うようになりました。やってるうちに、長唄や清元の笛も覚えたわけです」

 そして、歌舞伎座の囃子方として働くようになる。

「笛の兄弟子が歌舞伎座に入ってまして、手が足らないので手伝ってくれと頼まれたんです。仕事が少ない時期だったんで喜んで引き受けて、落語の仕事がある時だけ休ませてもらいました。そのうち笛の家元が、『落語家、やめられませんか?』って。それは無理だっていうの」

 そこまで家元に見込まれるのだから、よほどの腕だったのだろう。

「笛の方の名前は鳳聲克美というんですが、4世中村雀右衛門さんと3世実川延若さんが『男女道成寺』を踊った時です。仲間の柳家小里んと古今亭志ん橋が見に来て、緞帳が上がったとたん、大向こうから『鳳聲克美!』と声が掛かった。噺家だから声が通るんですよ。当たり前なら雀右衛門さんに『京屋!』と声が掛かるとこなのに、囃子方の下っ端のあたしに声が掛けられたので、長唄連中が全員あたしの方を見るわ、雀右衛門さんには睨まれるわで参りました」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動