笛の腕前を見込んだ家元が「落語家、やめられませんか?」

公開日: 更新日:

 歌舞伎座での囃子方は10年務めた。名優たちの思い出も多い。

「一番は、6世中村歌右衛門さんに可愛がっていただいたことですね。中村梅玉(当時は福助)さんが笛を吹くのをきっかけに歌右衛門さんが登場する場面で、あたしが裏で吹いた。その音色がお気に召したようで、ご祝儀を頂きました。家元と楽屋にお礼に伺い、お褒めの言葉を頂戴したのですが、次の日から3日間、落語の仕事で休んじゃった(笑い)。4日目にお会いしたら、『あなた、休んじゃダメじゃない』と言われて大謝りです」

 一朝が働いていた時期の歌舞伎界は、そうそうたる名優たちが舞台でしのぎを削っていた。

「そうですね。中でも先代尾上松緑(当時は辰之助)さんが印象に残ってます。三味線が踊りと合わないと、自分で弾いてみせた。それが上手なんで、凄いなあ、やっぱり何でも稽古してなきゃいけなんだと痛感しました」

 名優の芝居と素顔を見られたのは財産である。=つづく

(聞き手・吉川潮)

▽春風亭一朝(しゅんぷうてい・いっちょう) 本名・浮ケ谷克美(うきがや・かつみ)。1950年、東京・足立区生まれ。68年、5代目春風亭柳朝に入門。73年、二つ目昇進、「一朝」と改名。82年、真打ち昇進。84年、国立演芸場花形演芸新人大賞受賞。86年、「若手花形落語会」で文化庁芸術祭優秀賞受賞。2013年、第30回浅草芸能大賞奨励賞受賞。20年、第70回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)受賞。落語協会所属。2月2日18時半から人形町の社会教育会館で独演会。2月14日、お江戸日本橋亭で「春風亭一朝を聴く会」開催。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動