昭和虞美人草 高をくくり続ける日本人への“ロックな呪詛”
時は1973年。代議士・甲野大吾(早坂直家)の息子である欽吾(斉藤祐一)はローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンに夢中で、マニアックなロック雑誌「エピタフ」を主宰。自宅の居間を編集室にしている。編集に携わるのは盟友である宗近(上川路啓志)、小野(植田真介)、浅井(細貝光司)。そこに宗近の妹・糸子(平体まひろ)も加わっていく。
彼らを冷ややかな目で見るのは欽吾の腹違いの妹・藤尾(鹿野真央)。驕慢でシニカルで世の中のすべてに飽き飽きしているかのような高踏な女。彼女は気まぐれから小野に急接近する。小野は東大卒で将来を嘱望される優秀な人物だが、私生児であり、郷里の京都で篤志家の金山に育てられたのだ。金山の娘の小夜子(伊藤安那)といういいなずけのような女性がいる。
しかし、小野は藤尾に魅かれていく。それを認める藤尾の母・志津子(富沢亜古)にも底意がある。2人の女性の間で揺れ動く小野に宗近が諭す。
「小野さぁ、そいつはロックじゃないぜ……」
敗戦から二十数年、高度経済成長の絶頂からトイレットペーパー買い占め騒動という終焉(しゅうえん)に向かう時代のうねりの中で錯綜する若者たちの真情。